減価償却費の計算―定額法・定率法の違い

2019-05-18決算手続, 有形固定資産, Ladder3

はじめに

簿記では,利益を収益から費用を差し引いて計算します。ここで計算に使う費用の金額は,収益を稼ぐために必要となったすべての金額でなければなりません。利益を実際よりも大きく見せるために,一部を費用から除くようなことは認められません(粉飾計算)。

商品や消耗品のように,どれだけ使ったかが目に見えてわかるようなものについては,費用の金額を求めることも簡単です。お客さんに売った商品や,自分たちで使った消耗品をいくらで買ってきたかを調べればいいだけです。

一方,固定資産のように,長期間にわたって使用されるものの場合はそうもいきません。売ったり,捨てたりしない限り,商品や消耗品のように使った分が物理的に減るということがないからです。それでも,簿記では1年に1回利益を計算しなければなりません。さて,どうしましょうか。

簿記では,固定資産については,その期の費用にする金額(減価償却費)を計算式を使って求めることにしています。この計算の方法にはいくつかのものがあり,原則として,企業が自由に選択できます。固定資産はその使用分が目に見える形で分からないので,「絶対に正しい方法」を決めようがないからです。

定額法による減価償却費の計算

定額法は,その固定資産が使用されている間,毎期同額(一定額)を費用とする方法のことをいいます。1年分の減価償却費の額は,次の計算式によって求められます(端数が出た場合,小数点以下切り捨て)。

減価償却費(定額法)=取得原価÷耐用年数

たとえば,取得原価1,200,000円,耐用年数6年の固定資産について,減価償却費と未償却残高(取得原価から減価償却費を差し引いた金額。帳簿価額ともいう)を計算すると,次のようになります。なお,最後の年は1円残してください。

  減価償却費 未償却残高
取得時   1,200,000
1年目 1,200,000 ÷6= 200,000 1,200,000 200,000 1,000,000
2年目 1,200,000 ÷6= 200,000 1,000,000 200,000 800,000
3年目 1,200,000 ÷6= 200,000 800,000 200,000 600,000
4年目 1,200,000 ÷6= 200,000 600,000 200,000 400,000
5年目 1,200,000 ÷6= 200,000 400,000 200,000 200,000
6年目 200,000 – 1 199,999 200,000 199,999  1

なお, 平成19年(2007年)3月31日よりも前に取得 した固定資産について減価償却費を計算するときには,次の計算式を使います。

減価償却費(定額法)=(取得原価 − 残存価額)÷耐用年数

残存価額とは,その固定資産を使い切ったときに,廃品として売却できる金額のことをいいます。実際にこの金額を予測することは難しいので,税法上の規定である「取得原価の10%」を残存価額とすることが一般的です。

定率法による減価償却費の計算

定率法は,その固定資産が使用されている間,未償却残高の一定割合(一定率)を費用とする方法のことをいいます。

1年分の減価償却費の額を求めるためには,まず,次の計算を行います(端数が出た場合,小数点以下切り捨て)。

減価償却費(定率法・原則)=未償却残高×償却率……(a)

次に,この金額と次の計算式によって求めた償却保証額を比べます(端数が出た場合,小数点以下切り捨て)。

償却保証額=取得原価×保証率……(b)

そして,この2つの金額を比べます。(a)>(b)のときは,(a)の計算式で求めた金額が当期の減価償却費となります。

しかし,(a)<(b)のときは,これまでの計算結果を無視して,次の計算式で求めた金額を減価償却費とします(端数が出た場合,小数点以下切り捨て)。

   減価償却費(定率法・残存耐用年数僅少)
     =はじめて(a)>(b)となった年の期首未償却残高×改定保証率……(c)

実際に,取得原価1,200,000円,耐用年数6年の固定資産について,減価償却費の計算を行ってみましょう。耐用年数が6年の場合,償却率は0.333,保証率は0.09911,改定償却率は0.334となります。

まず,償却保証額を計算しておきましょう。償却保証額は1,200,000×0.09911= 118,932円 です。(a)で計算した金額がこの金額よりも小さくなったら,(c)の計算式にシフトすることになります。

  減価償却費 未償却残高
取得時   1,200,000
1年目 1,200,000 ×0.333= 399,600 1,200,000 399,600  800,400
2年目 800,400 ×0.333= 266,533 800,400  266,533  533,867 
3年目 533,867 ×0.333= 177,777  533,867 177,777  356,090 
4年目 356,090 ×0.333= 118,577   

さて,この例では,4年目に(a)の式で計算した金額118,577円が,(b)の式で計算した償却保証額118,932円よりも小さくなりました。この場合,(a)の式で計算した答え118,577円を捨てて,(c)の式に移ります。4年目の期首未償却残高は,3年目の減価償却が終わった後の356,090円です。あとはこの金額を使って計算していきます。なお,最後の年は1円残してください。

  減価償却費 未償却残高
4年目 356,090 ×0.334= 118,934  356,090 118,934  237,156 
5年目 356,090 ×0.334= 118,934  237,156 118,934  118,222 
6年目 118,222 – 1 118,221 118,222 118,221  1 

なお,定率法の償却率・償却保証率・改定償却率は,固定資産をいつ取得したかによっても変わります。簿記検定などでは償却率が1つしか与えられていませんが,税理士・公認会計士試験などでは複数の償却率が与えられているので注意しましょう。

応用論点

月割計算

固定資産を期中に取得した場合のように,1年間まるまる使っていない場合は,上の方法で計算した減価償却費の金額を調整する必要があります。上の方法で計算した金額は1年分の金額です。固定資産を使っている期間が1年未満なのに,1年分の金額を使ってしまってはおかしいことになります。

このような場合は,固定資産の使用月数に応じて減価償却費の金額を計算する 月割計算 という方法を使って修正を行います。 月割計算では,その月に1日でも使ったら1ヶ月とカウントします。

たとえば,ある固定資産を5月20日から12月19日まで使ったとしましょう。この場合の使用月数は何ヶ月でしょうか。固定資産を使った期間の長さはちょうど7ヶ月です。しかし,月割計算ではこれを8ヶ月とカウントします。5月,6月,7月,8月,9月,10月,11月,12月の8ヶ月です。通常の期間の長さとは違うので注意しましょう。

使用月数が分かったら,これを使って当期の減価償却費を計算します。その計算は,次の式を使って行います。なお,この計算式は,減価償却を定額法で行っている場合も,定率法で行っている場合も同じです。

減価償却費(当期分)=減価償却費(1年分)×使用月数÷12ヶ月

税務上の定額法償却率

通常,簿記検定で定額法による減価償却が求められるときは,取得価額(または取得価額から残存価額を差し引いた金額)を対象年数で割った金額を当期の減価償却費とすることが普通です。

しかし,過去の日商簿記検定で,これに代わって定額法償却率を使って減価償却費を計算することが求められることがありました。この場合は,上で説明した定額法の計算式ではなく,次の計算式を使って減価償却費を計算します。

減価償却費(定額法)=取得原価×定額法償却率

定額法償却率を使う場合,端数処理の関係で通常の割り算を使って計算した結果と金額が変わることがあります。たとえば,耐用年数3年の場合,割り算で計算する減価償却費は取得原価の3分の1(0.3333……)ですが,定額法償却率は0.334となりますので,小数点以下3桁目以降がズレてきます。

このため,「定額法償却率を使いなさい」という指示があるにもかかわらず,割り算で減価償却費を求めてしまうと,減価償却費の額を間違ってしまうことがあるのです。

簿記検定で定率法償却率が与えられていない場合

簿記検定で定率法による減価償却が求められているにもかかわらず,その償却率が問題文に示されていない場合があります。この場合は,次の計算式を使って償却率を求めてから,定率法による減価償却費を計算していきます。

250%定率法(平成19年4月1日〜平成24年3月31日取得分)

定率法償却率=(1÷耐用年数)×2.5

200%定率法(平成24年4月1日以降取得分)

定率法償却率=(1÷耐用年数)×2

ただ,この計算式で求めた償却率は税法上適切と認められる償却率とは必ずしも一致しませんし,実務上ははじめから償却率が与えられた状態でスタートしますので,これを自力で求められるようになったところで何か意味があるのかというと疑問が残ります。

>>>関連記事「検定試験で定率法償却率を自力で計算させる必要はあるのか?」

まとめ

減価償却費の計算は,定額法か定率法か,いつ取得したのか,残存価額は歩かないか(定額法の場合),償却費として計算した金額が償却保証額を上回っているか(定率法の場合)といったように,いろいろなことを考えながらすすめていかなければなりません。また,検定試験などでは,問題の様々なところに情報(金額,償却率,償却方法)が散らばっているので,これらを集めることも大変です。メモを取りながら,情報を整理して問題をときすすめていくようにしましょう。