法人税法に基づく減価償却費の計算(平成19(2007)年4月1日以降取得分)

決算手続, 有形固定資産

企業会計では,有形固定資産の減価償却について,原則として,企業独自の償却方法,耐用年数,残存価額等を使用することが認められています。しかし,「法人税法」では,減価償却にあたって使用できる償却方法,耐用年数,残存価額等に制限をかけています。これは,企業に対して自由な会計処理を認めすぎると,利益操作,ひいてはその企業が納める法人税額の操作が行われてしまい,課税の公平性が損なわれてしまう可能性があるからです。

「法人税法」における減価償却の方法は,有形固定資産の種類や取得日によって区別されていますが,その種類が多いことから,今回は企業が 平成19(2007)年4月1日以降に取得した有形固定資産 に限定して,その減価償却の方法を整理していきましょう。

減価償却の方法

企業は,保有する有形固定資産に対してどのような方法で減価償却を行うかについて,税務署に届出をしなければなりません。ただし,ここで届け出る方法は,企業が完全に自由に決められるわけではありません。 減価償却の方法は,原則として,「法人税法」上で認められた方法のなかから選択する ことになります。

建物

建物は, 定額法 によって減価償却を行うことになっています(「法人税法施行令」第48条の2第1号)。他の方法を選択することは原則として認められません。

取得日 2007/4/1以降
建物 定額法

建物附属設備,構築物

建物の附属設備および構築物の減価償却方法は,次のようになっています(「法人税法施行令」第48条の2第1号)。 2016年3月31日まで に取得したものについては定額法と定率法を選択することが認められていましたが, 2016年4月1日以降 に取得したものについては定率法を選択できないようになりました。また,定率法によって減価償却費を計算する場合,2012年3月31日以前に取得したものと2012年4月1日以降に取得したものとでは,計算に使用する償却率が変わります。

取得日 2007/4/1〜2012/3/31 2012/4/1〜2016/3/31 2016/4/1以降
建物附属設備,構築物 定額法または250%定率法 定額法または200%定率法 定額法

なお,2016年3月31日までに取得したものについて,採用する減価償却方法を税務署に届け出ていない場合は,法人税の計算上, 定率法 によって減価償却が行われたものとみなされます(「法人税法施行令」第53条第2項)。

  • 附属設備 建物に設置される設備のことで,エアコン,エレベータ,照明などのことをいいます。
  • 構築物 土地の上に設置される建物以外のもので,舗装,照明(街灯),立て看板などのことをいいます。

その他の有形固定資産

建物とその附属設備および構築物以外の有形固定資産の減価償却方法は,次のようになっています(「法人税法施行令」第48条の2第2号)。どちらも定率法であることに変わりはありませんが,建物等の場合と同じように,減価償却費を計算するにあたって使用する償却率が 2012年3月31日以前 に取得したものと, 2012年4月1日以降 に取得したものとで変わります。

取得日 2007/4/1〜2012/3/31 2012/4/1以降
その他の有形固定資産 定額法または250%定率法 定額法または200%定率法

なお,採用する減価償却方法を税務署に届け出ていない場合は,法人税の計算上, 定率法 によって減価償却が行われたものとみなされます(「法人税法施行令」第53条第2項)。

この区分に該当する有形固定資産には,次のようなものがあります。

  • 機械・装置
  • 船舶
  • 航空機
  • 車両・運搬具
  • 工具・器具・備品(観賞用・興行用等の生物を含む)

特別な償却方法

なお,ここに掲げた償却方法以外の方法で減価償却を行いたい場合,事前に税務署長に対して届け出を行い,承認を受けることが必要となります(「法人税法施行令」第48条の4)。たとえば,日商簿記2級の試験範囲にある 生産高比例法 は,「法人税法」上,鉱業用の減価償却資産にしか適用が認められていません(「法人税法施行令」第48条の2第3号)。鉱業用以外の目的で保有する有形固定資産の減価償却費を生産高比例法で計算した金額を法人税の計算に使用したい場合は,このような承認を受けることが必要となります。

耐用年数

「法人税法」上の減価償却では,有形固定資産の耐用年数が「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によって定められています。財務諸表を作成するにあたって,独自に見積もった耐用年数に基づいて減価償却を行っている場合でも,法人税の申告を行うにあたっては,その金額を「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められた耐用年数に基づいて減価償却を行ったときの金額に直す必要があります。

ここで,「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の一部を見てみましょう。

  • 器具及び備品
    • 家具,電気機器,ガス機器及び家電製品
      • 事務机,事務いす及びキャビネット
        • 主に金属製のもの……15年
        • その他のもの……8年
      • 応接セット
        • 接客業用のもの……5年
        • その他のもの……8年
      • 陳列棚及び陳列ケース
        • 冷凍機付又は冷蔵機付のもの……6年
        • その他のもの……8年

「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」には,このような形で用途や性能の違いによって1つ1つ耐用年数が列挙されています。企業は,このリストのなかから保有している資産にみあったものを見つけて,減価償却を行うことになります。

残存価額

「法人税法」上,2007年4月1日以降に取得した有形固定資産の 残存価額 はゼロとして減価償却を行います。

償却率

「法人税法」では,定額法で減価償却を行う場合も,定率法で減価償却を行う場合も,所定の金額に一定率をかけることによって減価償却費の金額を計算します。

定額法で減価償却を行う場合

定額法で減価償却を行う場合は,次の計算式によって1年分の減価償却費の金額を計算します。会計では,取得原価を耐用年数で割ることによって減価償却費を計算しますが,「法人税法」上では定額法でもかけ算を使います。

定額法による減価償却費(1年分)=取得価額×定額法償却率

定額法償却率も,「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に定められているので,それをそのまま利用します。省令では耐用年数2年から耐用年数100年までの償却率が示されていますが,ここでは耐用年数5年までの償却率を紹介しておきましょう。

耐用年数 償却率
2年 0.500
3年 0.334
4年 0.250
5年 0.200

定率法で減価償却を行う場合

定率法で減価償却を行う場合は,次の計算式によって1年分の減価償却費の金額を計算します。

定率法による減価償却費(1年分)=(取得価額−減価償却費の累計額)×定率法償却率

定率法では,耐用年数が残り少なくなったときに,上の式に代えて改定償却率を使って減価償却を行うことになります。この記事が少し長くなってきたので,改定償却率を使った計算については別にまとめた定率法による減価償却費の計算の記事を参照してください。

250%定率法(2007年4月1日から2012年3月31日までに取得)

2007年4月1日から2012年3月31日までに取得した有形固定資産について,定率法により減価償却を行う場合は, 定額法償却率を2.5倍(250%)にした償却率 を使用します。さきほどと同じように,耐用年数5年までの償却率を見ていきましょう。

耐用年数 償却率 改定償却率 保証率
2年 1.000
3年 0.833 1.000 0.02789
4年 0.625 1.000 0.05274
5年 0.500 1.000 0.06249

200%定率法(2012年4月1日以降に取得)

2012年4月1日以降に取得した有形固定資産について,定率法により減価償却を行う場合は, 定額法償却率を2倍(200%)にした償却率 を使用します。ここでも,耐用年数5年までの償却率を見ていくことにしましょう。

耐用年数 償却率 改定償却率 保証率
2年 1.000
3年 0.667 1.000 0.11089
4年 0.500 1.000 0.12499
5年 0.400 0.500 0.10800

おわりに

「法人税法」では,課税の公平を図るために,使用できる減価償却の方法を限定しています。企業は与えられた方法のなかから適切なものを選んで減価償却費を計算し,法人税の課税標準となる所得の金額を計算していきます。

なお, 「法人税法」上の減価償却費が会計上の減価償却費と異なる場合は,確定申告のときにそのズレを調整する必要があります。会計上の減価償却に特段のこだわりがない場合は,会計上の減価償却を「法人税法」上の減価償却方法と同じ方法にすることで,このような調整を行う必要がなくなります。