資本連結手続の基本

連結会計

資本連結手続は,連結財務諸表を作成するにあたって,まずはじめに行われる会計手続です。

資本連結手続では,次の2つの作業が行われます。ひとつは子会社が保有していた資産や負債を時価に再評価すること,もうひとつは親会社の個別財務諸表に計上されている投資の金額と子会社の個別財務諸表に計上されている純資産の金額とを相殺消去することです。

この記事では,この資本連結手続の2つの作業について整理していきます。

子会社の資産および負債の時価評価

連結財務諸表を作成するにあたっては,自社が 子会社を支配下においたときに,その子会社が保有する資産や負債をまとめて購入したと考えます(取得法)。購入ですから,そこで支払うべき金額はそのとき=支配獲得日の時価になります(商品をたとえば「2年前の価格」で購入することはできませんね)。

このまとめて取得した資産や負債をそれぞれ時価で評価するという考え方は,連結財務諸表を作成するときだけでなく,たとえば建物つきの土地を購入した場合など複数の資産をまとめて購入したときにも使われます(「企業結合に関する会計基準」第98項参照)。

子会社の資産や負債を時価評価した結果生じた差額(評価差額)は子会社の純資産に含めてしまい,次のステップで親会社の投資勘定の金額と相殺消去することになります。たとえば,子会社が保有していた土地(帳簿価額8,000,000円)の時価が10,000,000円であったとすれば,土地の帳簿価額を2,000,000円増やさなければなりませんから,その仕訳は次のようになります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
土地 2,000,000 評価差額 2,000,000

財務諸表の単純合算

子会社の資産や負債を時価で再評価したら,子会社の個別財務諸表上に計上されている金額を親会社の個別財務諸表上に計上されている金額と足し合わせていきます。「取得法」は子会社が保有する資産や負債をまとめて購入したと考えて行う処理方法でしたね。購入したわけですから,その分,記録上も金額を増やしてあげなければいけません。

なお,この手続は連結精算表上で行われることから,仕訳を行う必要はありません。

投資と資本の相殺消去

子会社が保有する資産や負債の時価評価が終わったら,親会社の投資勘定の金額と子会社の純資産の金額を相殺消去します。

何と何を相殺消去するのか

通常,子会社に対する支配を獲得するときには,その最高意思決定機関である株主総会の議決権と直結する株式を購入することになります。このため,ここでいう「親会社の投資勘定の金額」とは,具体的には有価証券の勘定(子会社株式勘定)のことを意味します。

また,ここでいう「子会社の純資産の金額」には,もともと子会社の個別財務諸表に計上されていた資本金,資本準備金,繰越利益剰余金などの金額だけでなく,さきほど資産や負債を時価評価したときに計上した評価差額の金額を含みます。

相殺消去の4つのステップ

投資と資本の相殺消去は,次の4つのステップで行います。

  1. 親会社の子会社に対する投資金額をすべて消去する。
  2. 子会社の純資産に対する親会社以外の持分(非支配株主持分)の金額を貸方に計上する。
  3. 子会社の純資産の金額(評価差額を含む)の金額をすべて消去する。
  4. 貸借差額をのれんまたは負ののれん発生益とする。

子会社に対する投資金額の消去

まず,親会社の個別財務諸表上,子会社株式勘定に記録されている子会社に対する投資金額をすべて消去します。子会社株式勘定は,他の有価証券を記録する勘定と同じように資産の勘定ですから,その記録を消去するときは貸方に記録を行うことになります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
    子会社株式 15,000,000

非支配株主持分の計上

次に,子会社の純資産に対する親会社以外の持分を計上します。

自社が子会社の株式のすべて(100%)を保有していない場合は,自社以外にも子会社の株主が存在することになります。このような自社以外の子会社の株主のことを 非支配株主 といいます。非支配株主も自社と同じように子会社に対して投資を行っていますから,子会社の純資産の一部はこれらの非支配株主のためにとっておかなければなりません。このとっておかなければならない部分の金額のことを 非支配株主持分 といいます。

非支配株主持分の金額は,次の式を使って計算できます。

非支配株主持分=子会社の純資産(評価差額を含む)×非支配株主の持分割合

たとえば,子会社の資本金が3,000,000円,利益剰余金が5,000,000円,評価差額が2,000,000円であり,非支配株主の持分割合(ほぼ株式の保有割合と同じです)が10%だとすると,その金額は1,000,000円((3,000,000円+5,000,000円+2,000,000円)×10%)となります。

非支配株主持分の金額は貸方に計上します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
    子会社株式 15,000,000
    非支配株主持分 1,000,000

子会社の純資産金額の消去

次に,子会社の純資産の金額をすべて消去します。純資産の金額はすべて貸方に計上されていますから,これらを消去するときはすべて借方に記録を行います。

借方科目 金額 貸方科目 金額
資本金 3,000,000 子会社株式 15,000,000
利益剰余金 5,000,000 非支配株主持分 1,000,000
評価差額 1,000,000

のれん・負ののれん発生益の計上

最後に,借方と貸方の差額をのれんまたは負ののれん発生益とします。

ここまでの記録で,貸方の金額の方が大きい場合(子会社の純資産・評価差額<親会社の投資・非支配株主持分)は, 借方にのれん勘定 を設けたうえで,借方と貸方の差額を計上します。

逆に,ここまでの記録で,借方の金額の方が大きい場合(子会社の純資産・評価差額>親会社の投資・非支配株主持分)は, 貸方に負ののれん発生益勘定 を設けたうえで,借方と貸方の差額を計上します。

上の仕訳では,借方の合計が10,000,000円,貸方の合計が16,000,000円ですから,その差額6,000,000円をのれん勘定として借方に計上することになります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
資本金 3,000,000 子会社株式 15,000,000
利益剰余金 5,000,000 非支配株主持分 1,000,000
評価差額 1,000,000    
のれん 6,000,000    

のれんを計上する前の借方と貸方の金額は,通常,貸方の方が大きくなります。これは,その企業も価値がある=評価が高い会社を取得しようと考えられるためです。いいもの,いい企業を購入するには高い額を支払う(投資する)必要があります。資本連結手続では,投資金額が貸方に計上されますので,貸方の方が大きくなるのです。

このため,この状況で借方に計上されるものがのれんで,その反対の状況(通常では考えにくい状況)のもとで貸方に計上されるものを「負の」のれんとしているのです。

おわりに

この記事では,資本連結手続の基本についてまとめてきました。期中に行われる通常の取引と比べて,1つの仕訳を行うためのプロセスが長いので,1つ1つのプロセスを分けて理解していくことが大切です。