減価償却とは何か―その目的と基本的な処理

有形固定資産, Ladder3

簿記では,原則として1年に1度,日々の活動のなかでとられた記録をまとめて財務諸表が作成されます(会計期間。関連記事【会計期間と簿記一巡の手続】参照)。損益計算書(P/L)は,ここで作成される財務諸表の1つです。損益計算書では,その1年間に発生した収益から費用を差し引いて純損益(利益や損失)が計算されます。

さて,企業がその活動を行うのために使用している資産のなかには,建物や備品のように,1年を超えて使用されるものもあります(有形固定資産,関連記事【使用目的で購入した資産を記録する勘定―固定資産と消耗品】参照)。原則として1年ごとに作成される損益計算書において,このように1年を超えて使用される資産に関する情報は,どのように計上していけばよいのでしょうか。

減価償却とは何か

減価償却(げんかしょうきゃく)とは,建物や備品のような有形固定資産の取得原価を,それが使用されると見込まれるすべての会計期間に,一定のルールにしたがって配分していく作業のことをいいます。

簿記では,ものを使ったときに,その金額を費用として計上することになっています(関連記事【損益計算書とその構成要素―収益・費用】参照)。しかし,建物や備品は,どれだけ使ったかを金額として把握できないので(使用学が見た目で分からないので),費用にすべきことは分かっていても,いくらで仕訳をしたらよいか決めることができません。

そこで,減価償却では,その取得原価を各期に配分した金額をその期の使用額と考えて,その金額を費用として計上していきます。この各期に配分された金額=その期の費用として計上する金額のことを減価償却費(げんかしょうきゃくひ)といいます。減価償却することによって生じる費用なので,減価償却費です。

減価償却の意義

もし減価償却の仕組みがなかったらどうなってしまうでしょうか。ここで少し考えてみましょう。

利益の平準化

建物などを使い終わったときに,その取得原価を一気に費用にしてしまうと,その期に大きな損失が発生してしまいます。建物などは,その取得のために数億円,数十億円という単位でお金を支払っていますから。それをまとめて費用にすれば,一気に利益が吹き飛びます。

損益計算書を見た人は驚いてしまうかもしれません。「去年まで順調に経営をしていたと思ったら,今年は大損失。一体何があったんだ?」といったように。また,このような本業とは関係のない形で利益が吹き飛んでしまうと,利益を企業の経営成績を測る指標として使えなくなってしまいます。建物などの取得原価が一気に費用に計上されてしまうことで,普段の商売を通じて積み上げてきた利益の額が見えなくなってしまうのですから。

減価償却を通じて,建物などの取得原価を,その使用期間にわたって配分することで,このような一気に費用負担が生じる=大損失が発生することを防ぐことができます。これを利益の平準化(へいじゅんか)といったりすることがあります。

恣意的な利益操作の排除

減価償却は,建物などの取得原価を一定のルールにしたがって配分していきます。この一定のルールというところが重要です。企業が好き勝手に各期の費用を決めてしまうことはできません。もし勝手に企業が決めていいということになると利益操作の手段として使われてしまう可能性があるからです。直前にお話したように,建物などの有形固定資産はその金額が大きいので,利益に与える影響が非常に大きいのです。

減価償却を行うタイミング

減価償却は,各期の費用の金額を計算するためのものなので,基本的に,その期の使用が終わったタイミングで行われます。この「その期の使用が終わったタイミング」とは,具体的には,次の2つのタイミングのことです。

  1. 期末(会計期間の終わりの時点)
  2. 売却・除却・廃棄等を行ったとき

1.は当然ですね。期末は会計期間の終わりの時点なので,それ以上,当期が続くことはありません。2.はいろいろなものがあげられていますが,まとめて言えば,その資産をもう使わなくなったときです。まさに「使用が終わった」タイミングということですね。

減価償却の仕訳―直接法と間接法

減価償却の仕訳には,直接法と間接法の2つの方法があります。このどちらの方法を選ぶかは企業の自由に任されています。

直接法

直接法は,減価償却費(費用)を計上するときに,建物勘定などに計上されている金額を減少させる方法です。これらは,購入時に借方に記録を行う資産の勘定ですから,金額を減少させるときは貸方に記録を行うことになります。

直接法では,各期の費用に計上された金額が,建物などの有形固定資産の各勘定から順次差し引かれていきます。このため,これらの勘定に残っている金額(残高)は,取得原価のうちまだ費用になっていない金額=これから費用になる金額を表すことになります(関連記事【記録のつながりを知れば仕訳を間違えにくくなる―資産から費用への流れ】参照)。

借 方 貸 方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
減価償却費 10,000 建物,備品など 10,000

間接法

間接法は,減価償却費(費用)を計上するときに,建物勘定などの金額を直接減少させる代わりに,減価償却累計額勘定という別の勘定を作って,この勘定に費用計上した金額を貯めていく方法です。減価償却累計額勘定は,建物勘定などの金額を減らすときと同じように,貸方に記録していきます。

間接法では,建物勘定などの残高は,建物などの取得原価のままキープされます。この建物などについて,まだ費用になっていない金額=これから費用になる金額は,建物勘定などに計上されている金額から,減価償却累計額勘定に貯められている金額をマイナスすることによって求められます。

このマイナスした後の残額のことをその建物などの帳簿残高(ちょうぼざんだか)と表現することがあります。各勘定の金額を集計した勘定残高(かんじょうざんだか)とは違いますので注意しましょう(関連記事【勘定金額の2つの集計方法―合計と残高】参照)。

借 方 貸 方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
減価償却費 10,000 減価償却累計額 10,000

まとめ

  1. 減価償却は,有形固定資産の取得原価を,その有形固定資産が使用されるすべての会計期間に費用として配分していくことをいう。
  2. 減価償却によって,有形固定資産が使用されている期間の利益の平準化を図れたり,経営者による恣意的な利益操作を防ぐことができる。
  3. 減価償却は,各有形固定資産について,その期の使用が終わったタイミングで行う。
  4. 減価償却の仕訳には,直接法と間接法の2つの方法がある。