貯蔵品勘定ー郵便切手・収入印紙の未使用額の処理

決算手続, その他の資産, 費用, Ladder3

簿記では,お金やものを使ったときに費用を計上するのが原則です。しかし,費用の勘定を使って仕訳されるもののなかには,実際に使用する前から費用に計上してしまうものもあります(別記事【さまざまな経費ー所得税の青色申告書を例として】参照)。

まだ使っていないものまで費用に計上してしまうと,使ったときに費用にするという原則に反してしまいます。そこで,簿記では,決算手続のなかで,このまだ使っていない部分の記録を修正するという作業を行うことにしています。

この記事では,このなかでも郵便切手と収入印紙の処理について学習します。

郵便切手・収入印紙とは何か

郵便切手

郵便切手は,郵便料金がすでに支払済であることを証明するために使用されます。はがきや手紙の配達を窓口で依頼するときはその場で料金を支払いますが,それらをポストに投函するときは料金を支払うタイミングがありません。そこで,事前に購入しておいた郵便切手を貼り付けることで,料金を支払ったことを証明する必要があるのです。

収入印紙

収入印紙(しゅうにゅういんし)は,印紙税という税金がすでに納付済であることを証明するために使用されます。企業は,領収書や契約書を作成したときに,印紙税という税金を納めなければならないことになっています。しかし,領収書や契約書を作成するときは目の前にお客さんなどがいます。税金を納めるためにその場を離れるわけにはいかないのです。そこで,事前に購入しておいた収入印紙を貼り付けることで,税金を納めていることを証明する必要があるのです。

郵便切手・収入印紙の仕訳

購入時の仕訳

郵便切手・収入印紙は,その購入時に費用の勘定を使って仕訳をします。具体的には,郵便切手は通信費勘定,収入印紙は租税公課勘定を使用します。

借 方 貸 方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
通信費 9,200 現金 9,200
租税公課 30,000 現金 30,000

繰り返しになりますが,郵便切手も,収入印紙も,どちらも実際に使われるまでは費用にはなりません。しかし,通常,どちらも必要になったときに購入するものなので,すぐに使われてしまいます。このため,簿記では,はじめからそれらを使ってしまったと仮定して費用の勘定で仕訳してしまうのです。

決算時の仕訳

期中に購入した郵便切手・収入印紙について,決算日にまだ使っていものがある場合は,費用の勘定(通信費勘定・租税公課勘定)に記録した金額を取り消します。このままの状態だと,まだ使っていないにもかかわらず,使ったかのように財務諸表上(費用の勘定で)表示されてしまうからです

決算日にまだ使っていない郵便切手・収入印紙がある場合は,次のように,その未使用となっている金額を費用の勘定(通信費勘定・租税公課勘定)から取り除き,貯蔵品(ちょぞうひん)勘定に振り替えます

借 方 貸 方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
貯蔵品 920 通信費 920
貯蔵品 3,000 租税公課 3,000

まず,郵便切手・収入印紙を購入したときは,借方に通信費勘定・租税公課勘定の仕訳を行いました。今回は,通信費勘定・租税公課勘定の記録を取り消すことになるので,その反対側である貸方に未使用額の記録を行います。

次に,貯蔵品勘定の記録は借方に行います。貯蔵品勘定は資産の勘定です。これは,郵便切手も収入印紙も,社内の備品と同じようにこれから使える財産だからです。これまで計上されていなかった財産を新しく計上する=記録上の金額が増えるということなので,記録が行われるのは借方になります。

なお,郵便切手・収入印紙の場合は,他の費用を繰り延べる(前払額を計上する)場合とは違い,前払通信費,前払租税公課といった勘定は使いません(別記事【費用の繰延べ―費用の前払額を当期の費用から取り除く仕訳】も参照してください)。それは,郵便切手や収入印紙が,次期になっても使用されずに(費用にならずに),売却(換金)されてしまう可能性があるからです。

翌期首の仕訳

財務諸表を作成し,一連の決算手続が終わったら翌期首付で,さきほど行った貯蔵品勘定に振り替えた仕訳を取り消して,元の状態に戻します。財務諸表に嘘(うそ)をのせたくなかっただけで,元々の処理が間違っていたわけではないからです。決算手続が終わり財務諸表ができてしまえば,もう貯蔵品にしておく必要はありません。

記録を元の状態に戻すときは,次のように,さきほどの仕訳を貸借逆にひっくり返して仕訳を行います。

借 方 貸 方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
通信費 920 貯蔵品 920
租税公課 3,000 貯蔵品 3,000

(参考)貯蔵品勘定に振り替えるもう1つのねらい

決算日に未使用分の郵便切手・収入印紙を費用の勘定から取り除く仕訳には,もうひとつのねらいがあります。それは,郵便切手や収入印紙を大量購入することで税負担を回避しようとすることを防ぐということです。

通信費勘定も租税公課勘定も費用の勘定ですので,計上すれば計上するほど利益の額が小さくなり,利益に対して課される法人税等の税金を抑えることができます。そこで,決算直前に利益を小さくするためにわざと大量に購入して利益を小さくしてしまうのです。郵便切手や収入印紙は,金券ショップなどで簡単にお金に戻すことができるので,この裏技を認めてしまうと,企業の現金を減らさずに税金だけ節約するといったことも可能になってしまいます。

そこで,未使用分の郵便切手・収入印紙は,費用の勘定から取り除いてしまうのです。いくら購入しても,費用でなくなってしまえば意味がありません。費用でなくなってしまえば,利益の額も小さくならず,法人税等の税金を抑えることができなくなってしまうからです。郵便切手・収入印紙の未使用分を費用の勘定から取り除いてしまうことには,このような不正を防ぐ効果もあるのです。

まとめ

  1. 郵便切手・収入印紙は,購入時に費用の勘定(通信費・租税公課)を使って仕訳する
  2. 決算時に,郵便切手・収入印紙の未使用額を貯蔵品勘定に振り替える
  3. 財務諸表を作成したら,記録を元の状態に戻すために,2.の仕訳を貸借逆に行う